「認知行動療法」とは?「認知」と「行動」の変容が治療につながる!?具体的な内容を解説します

カウンセリングをする女医(サムネイル)

皆様、「認知行動療法」という治療法を耳にしたことはありますか?

この言葉は耳にしたことがあるけれど、その詳細はよく知らない、という方が多いかもしれません。また、初めて聞く方もいらっしゃるでしょう。あるいは、この言葉を聞いて、なんだか複雑で取り組みが難しい治療なのかと感じる方もいるかもしれませんね。

この記事では、そんな「認知行動療法」に焦点を当て、それが一体何なのか、どのような効果が期待できるのかについて、わかりやすく解説していきます!

認知行動療法ってなんぞや?

悩む女医

認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy)、略してCBTは、ストレスなどにより制限された思考や行動パターンを広げ、より自由な考え方や行動を促進する心理療法です。

この療法は、もともとうつ病の治療のために開発されました。しかし、現在では、うつ病だけでなく不安障害や強迫症など、多くの精神的な問題に対しても効果的であるとされ、再発予防にも寄与すると考えられています!

そんなすごい認知行動療法。現在では精神科治療の領域を超えて、法律、教育、ビジネス、スポーツといった幅広い分野でその理念や方法が応用されています。この療法は、個人が自分自身の力で考え方を拡張し、より柔軟で自由な行動を取ることをサポートするための有効な手段とされています。

ストレス反応を理解する4つのポイント

不安な表情の女性

認知行動療法は、ストレスを引き起こす特定の出来事を分析し、その際に生じる、

  • 「思考のくせ」
  • 「感情の揺れ動き」
  • 「身体の反応」
  • 「自身の行動」

この4つの側面に焦点を当てて進んでいきます。

例えば、思考に偏りがあると自分に対して否定的になりやすい。感情の揺れ動きが多いと、冷静に物事を分析して客観視することが難しい。といった形で、私たちはストレスに対峙した時、思考や感情、行動などで反応し、それを処理しようとする働きを持っています。

これを「ストレス反応」とかって言ったりします。

もちろん、ストレス反応自体は自然な反応となりますが、これらの反応が連鎖すると、病的な思考やネガティブな感情に囚われてしまい、しばしば冷静な判断や正常な行動が困難になることもあります。

そこで精神に障害を持った方々がストレスと上手に付き合い、社会生活を健全に送るために

「変えられるのは実は"認知"と"行動"だけなんじゃないか!?」

と考えた学者さんが「認知行動療法」という療法を編み出していきます。

自動思考のずれと認知のパターン

泣きそうな表情の男性

私たちには、日々の出来事に対して即座に思い浮かぶ考えやイメージが存在します。これを「自動思考」と言います。

自動思考は、個々人の生活環境や経験に基づき、無意識のうちに形成されます。

例えば「いつも機嫌が悪くなると他人に対しての物言いや行動がきつくなる職場の上司」から無視された時、どう感じるでしょうか。

客観的にみると、その上司は機嫌が悪いと誰に対しても無視をするので、あなたにだけ厳しいわけではないのです。

ですが、言われたあなたはこんなことを思うのかもしれません。

「もしかして私は嫌われているんじゃ…!」

これがまさに自動思考です。

このような状況で「嫌われている」と感じる方は、自動思考と実際の状況の間に「ずれ」が生じており、これがいわゆる病的な「認知の歪み」となっているかもしれません。

このような否定的な自動思考は、不安や悲しみ、時には恐怖を引き起こし、ストレスを増大させることがあります。さらに、他人との関係性にも悪影響を及ぼすことがあるでしょう。このような状況が続くと、うつ病や不安障害などの精神的な健康問題や身体的な不調を引き起こすリスクがあります。

認知行動療法では、このような否定的な自動思考のパターンを徐々に変化させ、認知の歪みを修正し、心と体の負担を軽減することを目指します。

認知行動療法から得られる5つの主要な利点

認知行動療法は、以下の5つの主要な効果を提供します。

客観的な視点で物事を捉える能力の向上

認知行動療法は、自動思考の偏り、つまり、無意識に生じる思考の偏向に取り組みます。

たとえば、仕事の助けを求められた際に、普通なら「忙しいのかも」「手伝いが必要なのかも」と考えるのに対し、否定的な方向へと考えが進んでしまう場合があります。これにより、認知のバランスが崩れ、日常生活にネガティブな影響を与えることがあります。認知行動療法では、このような自動思考のバランスをとることで、冷静かつ客観的な物事の捉え方を身につけることを目指します。

ポジティブな行動を促進

否定的な自動思考に囚われると、感情が落ち込んだり、ネガティブな考えに支配されたりしやすくなります。このような状況は、日常生活のストレスを増加させ、精神疾患を引き起こす可能性があります。認知行動療法を通じて、否定的な自動思考を修正することで、物事を現実的に捉え、ポジティブな行動へと自身を導いていきます。

ストレスの軽減と精神疾患の改善

認知行動療法は、患者自身が不安や恐怖と向き合い、認知を段階的に修正する方法です。心の状態が改善されると、日常生活でのストレスが軽減され、不眠症や摂食障害、社交不安障害など、自動思考に大きく影響される精神疾患の改善に繋がります。

心のバランスを整え、精神疾患を予防

認知の偏りは、感情や行動を否定的にすることで、ストレスによる心身の負担を増加させます。最初は単なる後ろ向きの性格や心配性と思われるかもしれませんが、そのまま放置すると、うつ病などの精神疾患に発展する可能性があります。認知行動療法は、精神疾患が発症する前に適用することで、心のバランスを整え、症状の悪化を防ぐ効果が期待されます。

精神疾患の再発予防

うつ病やパニック障害などは再発しやすい精神疾患です。薬物療法で一度は改善されても、服薬を停止すると再発する可能性があります。認知行動療法は、数カ月にわたり心のバランスを徐々に整える方法です。治療を通じて、患者は自己と向き合うことになります。

結果としてネガティブな自動思考の存在に気づき、意識の表層に上るようになることで、自身での感情のコントロールや、行動変容が起こることによる再発予防に期待できます。

認知行動療法:多様な精神疾患への効果的なアプローチ

カウンセリングをする女性

精神疾患に苦しむ多くの患者は、極端な思考による認知の偏りを持っています。薬物療法と比較して副作用が少ない認知行動療法は、うつ病に限らず、次のような幅広い精神疾患や心の問題に対しても効果的であると考えられています。

  • 双極性障害(躁うつ病)
  • 社交不安障害
  • 統合失調症
  • 強迫性障害
  • パニック障害
  • 摂食障害
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)
  • 不眠症 など

これらの疾患に対して、認知行動療法は患者の認知の歪みを修正し、より健康的な思考パターンを築く手助けをします。

認知行動療法の実践方法

「認知」と「行動」をどのように改善するか、その方法について具体的な方法をいくつかご紹介します!

行動活性化

認知行動療法において、行動面に焦点を当てる際には、日々の生活パターンの調整や、喜びや達成感を感じる活動を増やすことによって、物事を避けたり延期したりする傾向を減らす「行動活性化」という手法が用いられます。

認知再構成

一方で、認知面に注目する際には、「認知再構成」と呼ばれる技法が採用されます。これは、起こった出来事に対する考え方を見直し、思考の範囲を広げることで、より穏やかな気持ちに導くための方法です。

自分自身で実践する認知行動療法

勉強をする女性

一般的には、認知行動療法は専門家の指導のもとで行われることが多いですが、この療法を患者自身が自主的に行うこともできます。

自分一人で取り組む際には、例えば日記などでもいいです。

日々ご自身のことや、日常生活での小さな行動を記録し、整理することで、思考や感情、行動パターンを客観的に観察し、それに基づいてセルフケアを構築することが可能です。

まとめ

談笑する医学生

この記事では、認知行動療法というテーマについて深堀りしました。初めて聞くと、「認知行動療法」という言葉は少し難しそうに聞こえるかもしれません。しかし、実際にその意味を理解してみると、非常に直感的で理解しやすい用語だと気づきますよね。

認知行動療法は、副作用の心配がほとんどない点で薬物療法とは異なり、うつ病や不安障害など、多くの精神的な課題に効果的なアプローチを提供します。この治療法は、患者さんの認知の偏りを徐々に矯正し、長期的な視点での再発予防にも寄与することが期待されています。

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てがある。編集部

いぴちき
いぴちき作業療法士
作業療法士兼イベンター。大学では企画構想学科を修了後、イベント運営会社に就職し放送業界にて活躍。その後、作業療法士の資格を取得し、リワークにて施設長を経験。好きなものはコーラ。犬か猫かといわれれば、やはり猫!